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運動再開に向けて:感染症予防

運動再開に向けて:感染症予防

こんにちは。トレーナーの渡部泰斗(わたなべたいと)です!

運動再開に向けての取り組みとして、我々が準備しておかなければいけない事柄について、今回は『感染症予防』についてまとめたいと思います。

活動再開後、選手・生徒を第2波、第3波の感染拡大から守る為にも

トレーナー・コーチ・教員、各スポーツ関係者の皆様に情報共有が出来れば幸いです。

目次

新型コロナウィルス(COVID-19)とは

新型コロナウィルスとはどういったウィルスなのでしょうか?

スポーツでも同じですが、相手を分析せずして、戦略は立てられませんので、改めて、確認していきましょう!

公表されている、主な情報をまとめます。

表1 新型コロナウィルスの特徴(文献3,8を参照に筆者改変)

表2 新型コロナウィルスの病態・症状(文献3,8を参照に筆者改変)

感染経路や、症状の出方を考えても、運動再開後に、知らぬ間にクラスターが発生なんてことが容易に想像出来てしまします。

それでは、新型コロナウィルスに対する準備として、何が出来るのでしょうか?

各団体によるガイドライン

NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)日本語版でも発表された、「アスリートのための安全なトレーニング再開に関するガイドライン」(2)にも、『施設と設備:清掃と衛生手順』が記載されています。

図1 運動再開時の施設・設備の衛生管理(文献2より引用)

スポーツ庁(4)(5)、公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)(4)(5)が出したガイドラインには、感染予防対策としての指針が細かく設定されています。

また、各都道府県のサッカー協会も新型コロナウィルス感染症対策の指針を提示しています。

図2 公益社団法人千葉県サッカー協会公式HPより引用

図3 一般財団法人鳥取県サッカー協会公式HPより引用

項目を見ると、必要な内容ですが、専門職ではない方々にとっては、では実際どう動けば良いのか?のイメージが付きにくいのではないかと感じました。

現場目線の解釈

ここからは、新型コロナウィルス対策の具体的な方法に関して深堀していきたいと思います。

大きく分けて 【環境面の設定】 ・ 【健康管理の実施】 に分けて考えていきます。

【環境面の設定】

スポーツ庁、公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)が出した「スポーツイベント再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」(4)(5)を参考に設定を考えてみます。

図4 運動再開時の環境設定(文献4,5を参照に筆者改変)

必要項目をピックアップして、凝縮しましたが、これでも多すぎてどこから手を付けたらいいか分かりませんよね。理想はこのガイドラインを順守し、環境整備を行っていく事ですが、チームによって運営方法や、環境は異なりますので、それぞれの方法で出来る事から始める事が肝要だと思います。

また、このようなチェックリストを設けて過不足を見つけていく事も必要です。

まず、手早く取り掛かれるコトとしては

-接触感染対策-

〇手指衛生

〇物品の清拭消毒

-飛沫感染対策-

〇3密を避ける

ではないでしょうか?

〇手指衛生

基本は石鹸と流水での手洗い、またはアルコールなどでの手指消毒になります。

新型コロナウィルスは ”エンベロープ” と呼ばれる膜で覆われており、それを石鹸やアルコールが破壊する為、手洗いや消毒が効果的と言われています。

石鹸での手洗い VS アルコール製剤での消毒

表3 石鹸、アルコール製剤の双方の利点(文献6,7を参照に筆者改変)

アルコール製剤の方が利便性に優れますが、価格の面や、管理のしにくさなども考慮して、手指消毒の方法を選択する事が必要です。また、アルコール製剤は洗浄効果は無い為、屋外競技などで目に見えて汚れている手は必ず手洗いもしましょう。

手洗いの場合は、使い捨てのタオルペーパーを配置するか、選手自身にタオルを持参させ、共有は禁止などの措置をとりましょう。

〇物品の清拭消毒

現時点で判明している新型コロナウイルスの残存期間としては、プラスチックやステンレスの表面では 72 時間とされてます。(9)

トレーニングや練習する環境で利用しているほぼ全てのモノにウィルスは少なくとも3日間は生存しています。不特定多数の人がそのモノを触れることにより、新型コロナウィルスは伝播的に広がっていきます。

例えば、ボトルからトレーニング器具、防具、掃除用品まで、スポーツを行う上で物品の消毒・管理は必要不可欠です。

『使ったら、消毒』の習慣を再開初期の段階でつけていく事も重要になってきます。

物品に対しての清拭消毒の方法としては、

アルコール(濃度60%以上)または、次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度0.1%~0.5%)(3)

を用いる事が推奨されています。

次亜塩素酸ナトリウム溶液とは、市販されている「塩素系漂白剤」の事です。以下の厚労省と経済産業省から出されている資料を参考にしながら、各チームで自家製消毒液を作成することをお勧め致します!

図7 次亜塩素酸ナトリウム溶液の作り方
(経済産業省、厚生労働省 HPより引用)

〇3密を避ける

この対策は各チームの選手自身やスタッフで方法を決める必要がありますね!

団体競技で接触しないように、というのも難しい話なので、ルールを決める必要があるかと思いますが、今後の課題となりますし、トレーナーとしては常に考えて実行していかなければならない事柄だと考えています。

「Jリーグ 新型コロナウィルス感染症対応ガイドライン(案)」(10)を参考にすると

トレーニング前後の選手・コーチ・トレーナー・その他関係者の動き方の細かい設定が必要になると感じます。

図8 トレーニング時の留意点(文献10より引用)

3密対策としては、マスク着用も入ってきます。

最近、再開された海外のサッカー、野球、ゴルフなどのリーグでの対策を見てもベンチメンバーや、スタッフはマスクを着用している姿が映ります。そういった各団体の取り組みを参考に、感染予防対策の輪を広げていければ良いのではないでしょうか!

以上が【環境面の設定】で想定し、対処できる事柄かと思います。

【健康管理の実施】

選手・子供たちを守る為に、健康を管理し把握する事は医療に携わるトレーナーはもちろん、部活動の顧問の先生方やコーチの皆さんにとっても責務です。

万一、新型コロナウィルスに感染した場合は、感染源を把握する為、その14日前までの行動履歴を見る事になります。その時、管理不足で感染経路不明のまま、新たな感染者を出さない為にも、毎日の体調管理が必要になってきます。

しかし、大人数の選手の体調を一人で管理・把握する事は中々難しい場合もあります。

そこで、例えば「Googleフォーム」や「ONE TAP SPORTS 株式会社ユーフォリア」などのツールを用いて、クラウド上で体調チェックをする方法なども積極的に使う事も一つの方法です。

図9 Googleフォームを使用した体調管理シート 一例

教育現場では、個人情報保護の観点からWEB上に生徒の情報を載せられないなどの制約もあると思いますので、練習前の体温測定を記載するといった対応でも十分です。

デジタル、アナログ、どんな方法を用いるにせよ、選手・子供を守る為に出来る事を考えていくことが何より大事な本質だと思います。

伝えたいこと

国内でもスポーツ再開に向けた動きは加速していくと思われます。

しかし、忘れてはいけないのは、新型コロナウィルスは今なお、我々と共存しているという事です。

そして、基本的には誰もがウィルスを保有している可能性がある事を念頭に、安全なスポーツ現場を取り戻す努力をしていく必要があります。

皆さんと共に、スポーツ現場の明るい未来に向けて、我々Train Stationも貢献していきたいと思います!

お読み頂き、ありがとうございました!

参考文献
1.      Caterisano A, Decker CD, Snyder C Ben, Feigenbaum M, Glass R, House P, et al. 不活動後の移行期にトレーニングに安全 に復帰するためのCSCCとNSCAの合同 総合ガイドライン. Strength Cond J. 2020;13–37.

2.       National Strength and Conditioning Association. COVID-19トレーニングへの復帰 アスリートのための安全なトレーニング再開に関するNSCAガイドライン. Natl Strength Cond Assoc [Internet]. 2020; Available from: NSCA.com/COVID-19-return-to-training

3. 一般社団法人日本感染環境学会.医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第 3 版.2020.

4. スポーツ庁.社会体育施設の再開に向けた感染拡大予防ガイドライン.https://www.mext.go.jp/sports/content/20200514-spt_sseisaku01-000007106_1.pdf.2020

5. 公益財団法人日本スポーツ協会.スポーツイベント再開に向けた感染拡大予防ガイドライン.https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/jspo/guideline.pdf.2020

6.World Health Organization.医療における手指衛生ガイドライン:要約版.2009

7. 白石 正.手指衛生に使用するアルコール製剤と洗浄剤

8. World Health Organization.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する Q&A.2020.

9. 国立感染症研究所.新型コロナウイルス感染症に対する感染管理.2020

10. Jリーグ 新型コロナウィルス感染症対応ガイドライン(案).https://www.jleague.jp/release/wp-content/uploads/2020/05/05e44038298e88260d6524bf435c85961.pdf.2020.